太もも二の腕脂肪吸引日記

水の森美容外科での太もも臀部含む及び二の腕の脂肪吸引の記録、備忘録、日記、短編小説、などなど。

スリースターズ

朝食の皿を片付けながら実花が言う。

「何食べたい?」

はるかが答える。

「んー………ご馳走?」

「曖昧!」

今日ははるかの誕生日だ。

「ちらし寿司とハンバーグと紅白なますかな?」

「節操ないね」

「決まりで」聞きつつ、背を向けながら実花が鞄から小さな包みを取り出す。

「?」「夜勤だから今渡しとくね」「ほう」

カサカサ音を立て取り出したそれは、小さな3連の星が付いたネックレスだった。

「わー!これは!かわいい!」テンションが上がる。

「可愛いでしょ。ちょっと髪持ってて」

はるかのフワフワした襟足をかきわけて首にネックレスをかけた。彼女は手元の小さな鏡を覗きながら首をくるくる回して具合を確かめている。

「かわいい」

「言ったがな」

「……ありがと」はるかが目を細め嬉しそうに微笑んだので、つられ実花も満足気に笑い返した。

「30歳なので星みっつにしてみました」

「そんな意味が……」

「30、3年、3ヶ月!」

はるかの職場で実花がお客さんとして出会ってから5年、晴れて付き合いはじめて3年、暮らすようになってから3ヶ月と少し経つ。

「333」

「東京タワーの高さか」

「いやそれはどうでもいいからね?」

気の抜けたやり取りが柔らかい光の部屋で続く。


「じゃーまた」

「がんばりましょー」

夕方より少し前に、お互い手を振って反対方向の道を歩き出す。

はるかは24時間営業のスーパー銭湯で働いており今晩は夜勤、実花は地元の夜の音楽ラジオ番組のDJをしている。

そういう訳なので明日の朝にお祝い本番の予定だ。

少し寂しい。

「寂しい」

歩きながらはるかの口から小さく本音がこぼれた。

とはいえ、とことこと職場に着き制服に着替えて受付のカウンターに立つ。受付業務担当の日だが、タオルの入れ替えや更衣室の見回りなどに入ることもある。

お客の入り具合でそれも変わるので、運が良ければ実花の番組が聴けるのだ。

カウンターのところではラジオの聞き取りばっちりである。

せめて声を聴きながら誕生日を過ごしましょう……、と思いつつ、正面に飾ってある花を眺めながら仕事に入った。


やがて実花の声がスピーカーから聴こえ、しめしめと思った。ハガキを繰りながら丁寧に読み上げるのを一度スタジオを見学させてもらって見た事がある。

落ち着いた声が廊下を流れる。


彼女は彼女で計画していた。

小さな職権濫用である。

これぐらい多目に見られるレベル。

わたしならだが。そう思いながら実花は番組を進めていた。はるかが聴いてくれてると良いなと思いながら。


明日の天気について隣の同期に話を振られたが適当に相槌を打つ。そんなこたどうでもいい。

「次のリクエストは、ペンネームみかさん、わたしとおんなじですね!スターキャンドルライトで、曲は「バースデイ」です。どうぞ!」

イントロが流れる。はるかはぼんやりと聴いていた。実花がよくきいてたバンドだな、と思いながら、カラオケに行った時にこの曲を歌っていたのを思い出した。


サビのところで目がチカチカした気がした。

「いつまでも愛してる、愛してる、愛してる。」

きっちり3回繰り返した言葉を聴いて、はるかは家でのやりとりを思い返す。


「…………なんか、大丈夫?今日?」

「えっ」

紅くなっている顔を同僚が覗き込み、

「今日は、えーと、ちょっとした、記念日なんです」よどみながら答えた。

「3がみっつ?みたいな?」

「???」同僚がはあ?みたいな顔をして、つぎに「あ、串カツ屋さん?」と言った。

「えっと……違います

笑いながら答えた。


仕事を終え、明後日は串カツにしようかな、と思いながら帰路につく。

たぶん、実花のほうが先に帰宅して、誕生日祝いのご飯が出来つつあるころだ。

夕べの事はなかなか衝撃的だったので、自分もなにか3にちなんだものを準備出来ないか……と思ったが、一刻も早く会いたかったので走って帰ることにした。

首元の星たちを何度もさわって確認しながら、商店街のシャッターが少しずつ開きつつあるなかを駆け抜ける。

朝日を浴びて、ショーウインドーに一瞬煌めきが映った。